7月の全校朝会での話

「なかよく生活しよう」

岐阜サークル 加藤久雄 

全校朝会での生徒指導主事の話に苦労しているという話を耳にする。そこで、ある月の話をリアルにそのまま再現する。「10おまけその2:全校朝会の話の工夫あれこれ」と一緒に役立てていただけたら、幸いである。
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7月の生活目標は6月と同じ「なかよく生活しよう」です。そこでね、全校のみなさんに聞いてみたいことがあります。
A小学校で馬淵先生といちばんなかよしなのはだれでしょう?
「・・・・」

5の2のK・T君です。(今、学校でいちばん手の掛かる子。ほとんど教室には入れない。この時も、「あんたのこと、ほめて話すからなかにはいってよ。」と何度も声をかけたが、体育館の外にいた。)

じゃあ、先生のなかで、ギターといちばんなかよしなのはだれでしょう? 「・・・」高屋先生です。高屋先生はどこかな? アッ、あそこです。(何人かの子が立って後ろを振り向く)高屋先生はギターととってもなかよしだから、ギターがとってもうまいんですね。今度、また、ギターを聞かせてもらおうね。

青虫やいろんな虫といちばんなかよしなのは、だれでしょう? (1年生の子が、ハーイと言う。3年2組の子がクスクス笑いながら、多く手をあげる)

あー、そこ3年生の子がたくさん手を挙げていますね。そうなんです。3年2組のT・Y君です(今、学校で二番目に手の掛かる子。この時、5年のK・Y君と一緒に体育館の外にいた)。3年生の先生が、理科の勉強でつかう青虫をさがしていたんだけど、ちっとも見つからない。そうしたら、T・Y君は、テーッと帰っていって、次の日に、20匹も30匹も青虫をつかまえてきてくれたんです。T・Y君は虫となかよしだから、どこに虫がいるかよーく知っているんですね。クラスのみんなから「虫博士」っていわれているんですよ。

さあー、じゃあ、メダカや金魚となかよしなのはだれでしょう? 5年1組のT・H君です。(いつも職員室に来ていて、友だちがいない子) T・H君、立ってみて。

T・H君はメダカや金魚の様子をいつも見ていてくれるんですよ。金魚に名前をつけて、絵も描いてきてくれました。校長室の廊下のところにはってあるから、見ておいてね。

コマといちばんなかよしなのは、だれでしょう? それはね、今中学1年生のM・Y君です。(5の2のK・Y君の兄。被虐待児で昨年の学年崩壊の中核にいた子)ひゅうーとこうやって、手にコマをのせる競争をしたことがあるんです。加藤先生のはこうやると、まっすぐに来て手にのるんです。ところが、M・T君のは、ひゅううーんと上を飛んでパッと手にのっちゃうんですね。(多くの子がへえーという顔つき)M・T君はコマとなかよしだから、コマまわしがとーっても上手なんですね。

では、本となかよしなのはだれでしょう? 図書館の木野村先生に聞いてみました。3人います。4の1のU・Oさん、4の2のS・Iさん、6の1のU・Kさんです。ハーイ、3人の人すわっていいですよ。

ところで、みなさん。この本知ってますか。(後ろの方から、見えなーいの声)『五体不満足』という本です。この本は、乙武君といってね。生まれたときから手も足もない人が書いた本です。乙武君は、手も足もなくっても、車椅子にのってバスケットボールをしたり、どんどん外へ出ていって、いろんな人といっぱい友だちになっちゃうんですね。とっても勇気がわいてくる本です。こういう本も読んで、障害を持っている人たちともなかよくなれるといいですね。

この本、家にあるよーっていう人、手を挙げてみて。(70から80人ぐらいの子の手が上がる)わーすごい、こんなに持ってるんだ。じゃあ、もう読んだよって人は?(10数人の子が手を上げる)読んだ人も、こんなにいるんですね。ほら、ここに「この本は、漢字に読みがながついています。小学生のみなさんもぜひ読んでみてください。」って書いてあります。夏休みに、読んでみてね。

(本を手に持って)図書館にあった『美しい地球をよごさないで』という本を持ってきました。この本には、世界中の子どもたちが声がのっています。いっぱい紹介したいんだけど、時間がないので三つだけ紹介します。一つ目。さあ、この子は、何となかよしなのか考えながら聞いてね。

「ぼくらの魚や花や鳥や木のこと、もっと考えてやらなきゃね。手おくれにならないうちに!そうしないと、お先まっ暗だよ。」ベルギーのウエンディ・マン君、9才の子です。この子は、なんとなかよしなの?

 そうだね。この子は、魚や花や鳥や木となかよしなんだよね。早くなんとかしないとみんな絶滅しちゃうって心配してるんだね。

二つ目。「しあわせとは、まわりのものを大切にすること、できるだけものを傷つけないようにすること、たとえアリでも、ふまないように注意することです。しあわせとは、ただたんに、ものを大切にすることなんです。」ヘレン・キャディック、イギリスの11才の女の子です。「人はだれも幸せになるために生まれてきた」って、何度も君たちに話してきたけど、この子は、ものとなかよしになることがしあわせだって、言っているんですね。ものとも、なかよくできるんだよね。

じゃあ、最後の三つ目。ウルグアイのマリア・マルタ・パスカルさん、9才の子はこんなことを言っています。

「地球を守るためなら、命をなげだしてもいい。だって、とっても美しいんですもの。」

この子は、美しいものが好きなんですね。命をなげだしてもいいぐらい好きだなんて、すっごいよね。

7月は、友だちや先生となかよくするだけでなくて、いろんな動物・物・そうして、地球上にある全部の美しいものとなかよくできるといいですね。

(だんだん声を大きくして)でもね、絶対になかよくしちゃあいけないひともいる。美しいものをこわすひと、人の命をそまつにするひと、平気で戦争を起こそうとするひと。そんなひととは絶対になかよくしてはいけません!!。・・・話をおわります。

☆体育館の出口のところで、『五体不満足』の本を持って立っていたら、たくさんの子が、そばに寄ってきて、いろんなうれしい声をかけてくれた。

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